稲村龍洞 菱野温泉の始まり

 

 

建久ニ年(1191年)稲村龍洞(いなむらりゅうどう)と呼ばれる馬宰士(ばさいじ)が戦により負傷し菱野にある洞窟に籠った。
夜、龍洞の枕元に光の中に如来の尊体が現れ、
「吾はこの草涌にあること二百余年誰一人として訪うものなく、只窟内荒廃して霊顕光明共に草律に埋らる。今吾は汝の正しき心と厚き信念を知る。依って汝に其の傷を癒する道を授けん。即ち此の南方四丁の位置に霊泉湧く、汝吾を彼の地に遷し、霊泉に浴さばその傷速に平癒すべし」
とのお告げをきき、不思議に思い付近を捜すと湧出する霊泉を発見した。
龍洞は早速霊泉に浴したところ、日ならずして平癒し以前より壮健な身体になった。

龍洞は大いに悦び、早速堂宇を建設して薬師如来の尊体をこの場所に鎮座した。